開業届を出すタイミングはいつ?個人事業主必見!開業日の決め方やメリット解説
開業届を出す最適なタイミング、提出時のポイントとは?
●開業届を提出する最適なタイミングと重要性
●開業日の決め方とその影響
●開業届の提出期限や青色申告との関係
●開業届を提出することで得られるメリット(公的証明、青色申告、融資など)
●開業届の提出時に注意すべきポイント(再就職手当、健康保険など)
個人事業主として事業をスタートしたら開業届を提出しなければなりません。
しかし「開業届はいつ出せばいいの?」「開業日の決め方にルールはある?」など、開業届の提出について疑問を持っている人も多いのではないでしょうか?
開業届は適切なタイミングで提出しなければ資金調達や税金面で不利になってしまうこともあります。開業届の提出方法や提出のタイミング、注意点について詳しく解説していきます
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この記事の目次
開業届とは「個人事業主が事業の開始時に出す書類」
個人事業主が事業を開始したら、税務署へ提出するのが開業届です。正式名称を「個人事業の開業・廃業等届書」といいます。
個人事業主は所得税を納税しなければなりませんが、開業届の提出によって税務署へ事業の開始を申し出ることができます。簡単に言えば納税のために「事業を始めました」と税務署に伝えるためのものです。
開業届は事業主の住所を所轄している税務署に提出します。住所によって管轄の税務署は異なるので、国税庁のホームページから所轄税務署を調べてください。
開業届に記載する開業日の決め方
開業届には開業日を記入する欄があります。開業日の決め方に決まりはありません。すでに事業を始めており、開業日がうやむやになってしまった場合は、改めて設定し直しましょう。
必ずしも、お店がオープンした日や事務所を開設した日でなくても構いませんが、次のポイントを意識しておくのがおすすめです。
開業日が記念日になる可能性を意識する
事業を始めてから開業日を記念日としてイベントなどをする予定があれば、イベントを開催しやすい日で選ぶのが良いでしょう。
例えば、2月などの閑散期を開業日とすることで、売り上げの少ない時期に開業記念イベントを仕掛けることもできます。
特にこだわりがないのであれば、ビジネスとして総合的な視点を持って決めるのも得策です。
経理に影響する可能性を意識する
開業日の日付によっては、経理に影響が及ぶことは覚えておかなければなりません。
開業にかかった費用は総じて経費にできますが、発生したのが開業日より前か後かで計上方法が異なります。
開業日より前にかかった費用は「開業費」に分類され「繰延資産」の扱いです。繰延資産は、決算で任意の額を償却し経費に計上します。
赤字のときは償却せず、黒字になってから処理するといった使い方をすれば、適切な節税対策になるのです。このように、開業費の扱いを見越して開業日を決めるのも一手となります。
縁起の良い日を意識する
開業日の決め方として定番なのが、縁起の良い日から決める方法です。開業日の決め方に厳格なルールはないものの、縁起の悪い日付は避けたい人も多いのではないでしょうか。
会社のスタートとして縁起の良い日の例を以下にまとめました。
縁起の良い日 | 概要 |
---|---|
一粒万倍日(いちりゅうまんばいび/いちりゅうまんばいにち) | 一粒のもみから万倍の稲穂が実ることにかけられた、物事を始めるのに良いとされる吉日 |
天赦日(てんしゃび/てんしゃにち) | 何事にも天からの赦(ゆる)しが得られると言われる、非常に強い吉日 |
寅の日(とらのひ) | 12日に一度の金運に良いとされる吉日 |
大安(たいあん) | 何をするにも良しとされる、六曜の中の吉日 |
暦の習慣にはさまざまな考えが存在し、これが絶対というものはないので、自身が思う暦に合わせて決めてみましょう。
吉日同士が重なると、より運気が高まる言い伝えもあります。中でも天赦日と一粒万倍日が重なる日は一年の中でも最強の開運日と呼ばれ、開業日にも最適です。
開業届はいつまでに提出する?提出期限は?
開業届はいつまでに提出すべきなのでしょうか?開業届の提出期限や青色申告をする場合の対応について詳しく解説していきます。
開業届の提出期限は開業後1カ月以内
開業届の提出については所得税法第229条に以下のように明記されています。
国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し(中略)た場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
法律によって開業届の届け出は事業を開始した日から1カ月以内に税務署長へ提出しなければならないと定められています。
開業届を青色申告承認申請書と一緒に提出する場合
青色申告をする場合、開業届とともに「青色申告承認申請書」を出します。青色申告承認申請書は、開業から2カ月以内には提出しなくてはなりません。
青色申告をしたい場合の厳密な提出期限は次のとおりです。
- 開業日が1月1日~1月15日:3月15日までに提出
- 開業日が1月16日以降:開業から2カ月以内に提出
提出期限を過ぎてしまうと、開業初年度の青色申告ができなくなります。白色申告となり控除額に影響するため、提出期限を意識しておきましょう。
開業届は提出が遅れても特に罰則はない
開業届の提出が開業後1カ月を超えてしまったとしても罰則はありません。
そのため「所得が一定を超えたタイミング」「屋号で銀行口座を作るタイミング」「最初の確定申告の前」など、さまざまな選択肢があるのです。
しかし、開業届を提出することによるデメリットは特にないので、口座作成や資金調達を円滑にするためにも、できる限り開業してから1カ月以内に提出した方がよいでしょう。
開業届はいつ出す?提出タイミングで気をつける6つのポイント
開業届は届け出時に以下の6つのポイントに注意する必要があります。
タイミングを間違えてしまうと金銭的に損をする可能性があるので注意が必要です。
副業ではなく本業になったタイミングで提出
副業ではなく本業になったタイミングで開業届を提出しましょう。サラリーマンが副業として収入を得ている段階では、提出する必要はありません。
副業収入で得た場合の所得は「雑所得」です。雑所得では最大65万円が適用される青色申告控除の利用ができません。
副業の間に開業届を提出してもメリットはないため、副業から本業になり、事業所得を計上できるようになった段階で開業届を提出しましょう。
所得が48万円を超えたら提出
個人事業主としての年間所得が48万円を超えたら開業届を提出しましょう。税金で得をする可能性が高くなります。
48万円とは、誰もが使える基礎控除の額です。所得が48万円未満なら差し引き0なので、課税所得はありません。そのため、青色申告の控除を使う必要性が低いのです。
48万円を超えた部分は課税所得となり、税金が発生します。青色申告の控除があれば、65万円までの課税所得は0に、それ以上であっても課税部分を大きく控除できるので、重要な節税対策になるのです。
年内に事業所得があった人は年内に提出
年内に事業所得があった場合には、年内に開業届を提出しましょう。
提出が翌年になってしまうと、前年の所得に関して青色申告控除を受けられなくなります。開業届を出すときに一緒に青色申告申請書も提出し、青色申告の準備を整えるのがおすすめです。
青色申告とは複式簿記に基づいた申告方法で、最大65万円の控除が使えます。利用するには開業から2カ月以内、または青色申告する年の3月15日までに申請書の提出が必要です。
再就職手当を受けたい人は退職のタイミングで提出
退職後に再就職手当を受けたいときは、退職する際に開業届を出しましょう。再就職手当は再就職した人がもらえますが、再就職には「個人事業主の開業」も含まれるからです。
以下の要件を満たしているなら、開業届の提出で再就職手当が受給できます。
失業給付を受けられない前提で提出
会社を退職して失業給付を受けようとしている人は、要注意です。独立開業しようとしている人は失業状態とは見なされず、給付を受けられない可能性があります。
開業届を提出するなら、どのタイミングにおいても失業給付の対象から外れることを想定しておきましょう。
失業給付ではなく「再就職手当」であれば、事業を始めた場合でも支給される可能性があるので、詳しくはハローワークに問い合わせてみて下さい。
健康保険の被扶養者は組合に確認してから提出
配偶者の被扶養者として配偶者の健康保険に加入している人は、開業届の提出を慎重に考えましょう。
健康保険組合の中には「個人事業主は健康保険組合には入れない」と決められていることがあります。
そのような会社の場合、開業届を提出したことによって扶養を外れてしまう可能性があるので、開業届を提出する前に健康保険組合の確認をとった方がよいでしょう。
開業届を出すメリット
開業届は提出によって事業に有利となることがほとんどです。メリットを把握し、早めに出しておきましょう。
開業を公的に証明できる
個人事業主にとって実務的に最も大きなメリットが「開業届の提出によって開業を公的に証明できる」という点です。
個人事業主は法人のように登記ができません。故に「個人で事業を営んでいる」と客観的に証明しにくいですが、開業届を提出していれば十分な証明になります。
開業の事実を公的に示すことで取引における信用性が増すなど、事業をする上で重要なアピール材料になります。
屋号で銀行口座が開設できる
開業届の提出は、屋号で銀行口座が作れるメリットにもつながります。銀行に開業届の控えを出せば、屋号で銀行口座が作れるのです。
個人名の口座を使うよりも信用度がアップするほか、プライベートな口座との区別が明確になるため、管理しやすくなります。
青色申告特別控除が使用できる
事業開始から2カ月以内に「青色申告承認申請書」を出すと、確定申告時に青色申告が使えるメリットがあります。青色申告承認申請書は、開業届を提出した事業者が出せる書類です。
青色申告には以下のような節税効果があります。
特別控除を利用すれば、事業所得にかかる税金を抑制できます。青色申告の控除額は10万円・55万円・65万円と段階的に分かれており、最大額の控除を受けるにはe-Taxの申告と電子帳簿の保存が必要です。
損失の繰り越しも青色申告特有のルールで、事業が赤字の場合は利益との相殺によって納税額を減らせます。もしものために把握しておきましょう。
低金利の事業資金融資を受けられる
銀行や日本政策金融公庫の事業資金融資は個人事業主でも借り入れできますが、審査の際には「確かに事業を営んでいること」の証明として開業届が必要です。
低金利の事業資金融資は、事業の拡大や発展に欠かせません。開業届によって資金調達の選択肢が増えることにもつながります。
すぐに融資の予定がなくても、開業届を提出して融資が受けやすい状態に整えておくのがよいでしょう。
補助金・助成金や各種サービスの申請で使える
補助金や助成金を申請する際にも、事業をしていることを証明するために開業届が必要になる場合があります。
また、楽天市場などのECサイトでも、出店審査の際に開業届の提出を求められる可能性があるでしょう。事業で使うサービスの規約にて開業届の必要性を確認してください。
開業届は個人事業主にとって身分証明書のようなものです。提出しておかないと事業のさまざまな面で支障をきたす可能性があります。
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家族への給与を経費にできる
開業届を出すことで利用できる青色申告では、家族を従業員として雇う場合に給与を経費計上できます。
家族従業員は「青色事業専従者」となり、支払う給与を経費として扱えるのです。
開業届を出していない場合は白色申告のみなので、青色事業専従者のルールは利用できません。家族に事業を手伝ってもらう予定の個人事業主は知っておくべきポイントです。
開業届の入手方法と便利なサービス
開業届の入手方法と開業届提出の便利なサービスを紹介します。
開業届の入手方法
開業届は税務署の窓口か国税庁のホームページで入手できます。
開業届へ記入する内容は住所、氏名、屋号、職業、届け出の区分(新設か廃業か)、所得の種類、開業日、事業の概要などで、簡単な項目がほとんどです。
無料の開業届作成サービス
「会計ソフトfreee」や「マネーフォワード」などのクラウド会計サービスを使えば、個人事業主の開業届を無料で作成できます。
オンライン上で名前や住所などの項目を埋めていくだけで、簡単に作成可能です。作成した開業届を印刷し、税務署へ提出するだけで手続きが済みます。
間違いが少なく費用もかからないので、開業届の提出に不安がある場合には活用してみましょう。
開業届の開業日は変更が可能
開業届を税務署に提出した後でも、開業日の変更は可能です。日付の変更は、以下の2つの方法があります。
開業届を出してから1カ月以内に取り下げる
開業届は1カ月以内であれば取り下げられるので、税務署に相談しましょう。一度取り下げたあと、改めて開業日を設定してから届け出し直します。
取り下げや再提出の手間はかかりますが、どうしても開業日を変更したい場合は検討してください。
開業届を再提出する
取り下げできないときや1カ月以上経過しているときは、そのまま開業届を再提出します。最初に提出したときと同様に開業届を用意し、税務署に届け出ましょう。
開業届の提出自体は何度してもかまいませんが、繰り返し再提出すると税務署に目をつけられる恐れがあるため、やむを得ない事情がない限りは一度のみにするのが賢明です。
まとめ・開業届をいつ出すかに決まりはない。自分のベストタイミングを選ぼう
個人事業主として腰を据えてやっていこうと考えているなら、きちんと開業届を提出しましょう。実務的なメリットに加え、自分自身の開業への意識付けとなり得ます。
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(編集:創業手帳編集部)
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